学生時代からOn-line, Real Time計測(含む分析)携わってきて、40年を超える。学生時代には、Real Timeの相関・スペクトル(音)分析、サラリーマンの最後の約20年間は分光分析(主に近赤外領域)機器で スペクトルに関わってきた。長く関係したわりには、日々の仕事に追われ、スペクトルとその関連技術をしっかりと見直したことはないように思える。ここでは、<スペクトルあれこれ>、<展示会見て歩記>、<文献探索から>の3つの視点からスペクトルに関連する事象について思いつくままに述べてみたい。
2014年12月3日水曜日
<文献検索から>(12)菌根菌有無による培養根の近赤外と赤外域の分光学的な特性
(題名:Mid-Infrared and Near-Infrared Spectral Properties of Mycorrhizal and Non-mycorrhizal Root Cultures)
著者:F. J. Calderon, V. Acosta-Martinez, D. D. Douds Jr., J. B. Reeves III, and M. F. Vigil
出典:Applied Spectroscopy, Vol.63, No5: 494-500 (2009)
【用語】
アーバスキュラー菌根菌……菌根のうち大多数の陸上植物の根にみられるもの。菌根(きんこん)は、菌類が植物の根に侵入して形成する特有の構造を持った共生体。菌根を作る菌類を菌根菌という。日本の主要経済樹種であるスギやヒノキはアーバスキュラー菌根性で、アーバスキュラー菌根の機能としては、リン等の吸収促進、耐病性の向上、水分吸収の促進の3つが挙げられる。このため、アーバスキュラー菌根が形成されると作物は乾燥に強くなり、肥料分の乏しい地でも効率よく養分を吸収してよく育つようになる。
【抄録】アーバスキュラー菌(AM)は多くの農産物と共生関係にあり、しばしば土壌の改質と生産量を増やす効果がある。菌根菌は宿主から炭水化物を得て脂質として蓄える。これらの菌の脂質には通常には無い脂肪酸があり、菌根菌のマーカーとして使用できる。従来菌根菌の検出は、顕微鏡の観察と形態学的な解釈によって行われていた。脂肪酸分析法として脂肪酸メチルエステル分析があるが破壊的サンプリングで湿式化学の手順とガスクロマトグラフィが必要になる。NIR(近赤外)とMIR(中赤外)の拡散反射分光法は穀物、飼料、土壌のような農業物質の迅速で非破壊でできる分析法として確立している。
菌根菌の定着を調べるマーカーを見つけるために、菌根菌がある物(M)と無い物(NM)のニンジンの根の分光学的特性をフーリエ変換型の近赤外と赤外分光器を使用して求めた。菌根菌の感染を確認し脂肪酸マーカーの存在をし食べるために、根サンプルの脂肪酸の構成が調べられた。根の他に標準脂肪酸、純粋培養した腐生真菌、キチンが、サンプルのスペクトルバンドを同定するために調べられた。MとNMサンプルのスペクトル的な差を調べるために主成分分析(PCA)が使用された。近赤外スペクトルでは、前処理を行わず良い分離結果が得られたが、赤外領域ではSNV(Standard Normal Variate)とDetrendingが使用された。PCAのLoadingは、菌根菌有りのサンプル(M)は、400,1100,1170,1690,2928,5032cm-1付近の吸収によって特徴づけられていることを示し、菌根菌無しのサンプル(M)は1734,3500,4000,4389cm-1付近に特徴のあることが分かった。結論としてアーバスキュラー菌有無はNIR とMIRを使用して判別可能で、他の方法に比べ迅速で便利である。
登録:
投稿 (Atom)