(題名:Multivariate Analysis of Combined Fourier Transform Nera-Infrared Spectroscopy(FT-NIR) and Raman Datasets for Improved Discrimination of Drying Oils)
著者:S. Carlesi, M. Ricci, C. Cucci, J. La Nasa, C. Lofrumento, M. Picollo, M. Becucci
出典:Applied Spectroscopy, Vol. 69, No7, 2015, P865-875
【抄録】
<はじめに>
サンプルの消費が比較的大きい、実験時間が長い、サンプルの調合が複雑等、経時変化するサンプルの解析には明らかに問題があるにもかかわらず、ガスクロ、電気泳動、LC等の分離分析、質量分析、ハイフネット技法は有機物の解析に良く用いられている。振動分光法(赤外(IR), Raman等)は前術のような問題が少なく、又IRとRamanは相補的な分光学的技術と言われているが、定量的な解析にたいしては二つを結びつけたアプリケーションは必ずしも効果的な結果になっていない。この論文では油絵のバインダー(乾性油)をサンプルとして、Ramanと近赤外(Near Infrared、NIR)の1次微分スペクトルを結合し主成分分析(PCA)を適用した場合について調べた。目的は同じ有機分類に属する化合物間での識別能力を増やすことである。油絵の具のバインダーは種々の脂肪酸が濃縮されたトリグリセリドと少量のステロールやビタミンのような他の成分からなる。異なるバインダーの差はほとんど相対的な脂肪酸成分による。絵画の乾性油の特性は、光と酸素に暴露されて固体膜を形成し、酸化と架橋反応により複雑に変化する。
<実験>
サンプルオイル(亜麻仁油、スタンド油、ケシの実油、クルミ油)はそれぞれ顕微鏡のスライドガラスにフィルムとして塗布され、棚で乾燥のために3カ月放置された。
Ramanスペクトル…励起波長785nm、入力パワー1.1mW、直径2μmの領域を解析した。 NIRスペクトル…フーリエ変換型分光器(FT-NIR)を使用、反射測定モードで測定した。 分解能はいずれも4 cm-1、それぞれ128スペクトル (それぞれのサンプルから4か所の違う場所から採取)
<データ解析>
ラマンスペクトルは200-2000 cm-1が測定され、750-1800 cm-1の範囲が解析に使用された。FT-NIRは6000-3900 cm-1の波数領域が解析に使用された。
それぞれのデータは別々に前処理され、ラマンスペクトルはベースライン補正後1次微分され、NIRスペクトルは1次微分のみが施された。FT-NIRとラマンスペクトルは、ピークの絶対値を使用することによるサンプルの誤判別を避けるためにベクターノーマライズが行われた。結合した1次微分スペクトル(波数範囲;6000 cm-1~3900 cm-1、1800~750 cm-1)を使用して主成分分析を行った。
RamanスペクトルとNIRスペクトル別々にPCAを行ったところ、Ramanでは異なったサンプルで共通の傾向が見られたのに対し、NIRでは主にメチレンCH伸縮と変角の結合音の異なった寄与に依存する異なった製造業者のサンプル判別が出来ることが明らかになったが、クルミ油では2つの製造業者の差を判別できなかった。又Ramanスペクトルではクルミ油とけしの実油を完全に区別することが出来なかった。
これらに対し、RamanとNIRからの合成スペクトルを使用したPCA解析では各種乾性油判別でき、製造業者の違いを区別できた。
<結論>
乾性油(亜麻仁油、スタンド油、ケシの実油、クルミ油)の種類とその製造業者の判別が、RamanとNIRの結合スペクトルを用いることにより大きく改善された。C=C伸縮の基本音(1700-1600 cm-1)とメチレン伸縮と変角の結合音から得られる情報は判別分析の感度と特定能力を改善させた。これら二つの波数域はNIR又はRaman単体では使用できない。異なった波長域を持つ結合スペクトルを使用するPCAはスペクトルからより多くの情報を引き出しより良い解析を可能にした。
著者:S. Carlesi, M. Ricci, C. Cucci, J. La Nasa, C. Lofrumento, M. Picollo, M. Becucci
出典:Applied Spectroscopy, Vol. 69, No7, 2015, P865-875
【抄録】
<はじめに>
サンプルの消費が比較的大きい、実験時間が長い、サンプルの調合が複雑等、経時変化するサンプルの解析には明らかに問題があるにもかかわらず、ガスクロ、電気泳動、LC等の分離分析、質量分析、ハイフネット技法は有機物の解析に良く用いられている。振動分光法(赤外(IR), Raman等)は前術のような問題が少なく、又IRとRamanは相補的な分光学的技術と言われているが、定量的な解析にたいしては二つを結びつけたアプリケーションは必ずしも効果的な結果になっていない。この論文では油絵のバインダー(乾性油)をサンプルとして、Ramanと近赤外(Near Infrared、NIR)の1次微分スペクトルを結合し主成分分析(PCA)を適用した場合について調べた。目的は同じ有機分類に属する化合物間での識別能力を増やすことである。油絵の具のバインダーは種々の脂肪酸が濃縮されたトリグリセリドと少量のステロールやビタミンのような他の成分からなる。異なるバインダーの差はほとんど相対的な脂肪酸成分による。絵画の乾性油の特性は、光と酸素に暴露されて固体膜を形成し、酸化と架橋反応により複雑に変化する。
<実験>
サンプルオイル(亜麻仁油、スタンド油、ケシの実油、クルミ油)はそれぞれ顕微鏡のスライドガラスにフィルムとして塗布され、棚で乾燥のために3カ月放置された。
Ramanスペクトル…励起波長785nm、入力パワー1.1mW、直径2μmの領域を解析した。 NIRスペクトル…フーリエ変換型分光器(FT-NIR)を使用、反射測定モードで測定した。 分解能はいずれも4 cm-1、それぞれ128スペクトル (それぞれのサンプルから4か所の違う場所から採取)
<データ解析>
ラマンスペクトルは200-2000 cm-1が測定され、750-1800 cm-1の範囲が解析に使用された。FT-NIRは6000-3900 cm-1の波数領域が解析に使用された。
それぞれのデータは別々に前処理され、ラマンスペクトルはベースライン補正後1次微分され、NIRスペクトルは1次微分のみが施された。FT-NIRとラマンスペクトルは、ピークの絶対値を使用することによるサンプルの誤判別を避けるためにベクターノーマライズが行われた。結合した1次微分スペクトル(波数範囲;6000 cm-1~3900 cm-1、1800~750 cm-1)を使用して主成分分析を行った。
RamanスペクトルとNIRスペクトル別々にPCAを行ったところ、Ramanでは異なったサンプルで共通の傾向が見られたのに対し、NIRでは主にメチレンCH伸縮と変角の結合音の異なった寄与に依存する異なった製造業者のサンプル判別が出来ることが明らかになったが、クルミ油では2つの製造業者の差を判別できなかった。又Ramanスペクトルではクルミ油とけしの実油を完全に区別することが出来なかった。
これらに対し、RamanとNIRからの合成スペクトルを使用したPCA解析では各種乾性油判別でき、製造業者の違いを区別できた。
<結論>
乾性油(亜麻仁油、スタンド油、ケシの実油、クルミ油)の種類とその製造業者の判別が、RamanとNIRの結合スペクトルを用いることにより大きく改善された。C=C伸縮の基本音(1700-1600 cm-1)とメチレン伸縮と変角の結合音から得られる情報は判別分析の感度と特定能力を改善させた。これら二つの波数域はNIR又はRaman単体では使用できない。異なった波長域を持つ結合スペクトルを使用するPCAはスペクトルからより多くの情報を引き出しより良い解析を可能にした。