2016年4月4日月曜日

<文献検索から>(20) 近赤外(NIR)スペクトルを基礎にした医薬品賦形剤製造業者の判別に対する多変量戦略の応用

題名Application of Multivariate Strategies to the Classification of  Pharmaceutical     Excipient Manufacturers Based on Near-Infrared (NIR) Spectra
著者:Ting Wang, Ahmed Ibrahim, Alan R. Potts, Stephen W. Hoaga
出典:Applied Spectroscopy Volume 69, Number 11, p1257-1270 (2015)
 
【抄録】
  賦形剤市場におけるサプライチェーンのグローバル化、賦形剤製造業者の数と多様性は増加しており、賦形剤の誤認及び品質管理のリスクも増加してきている。
最小限のサンプルで迅速かつ信頼性の高い測定が、賦形剤の誤認判別と品質管理のために必要とされ、最終の医薬製品の性能と測定との相関を確立できる手法が望まれている。
近赤外分光法はデンプン、糖、およびセルロースなどの賦形剤または化学的に類似の賦形剤、例えば、セルロース誘導体など、医薬の多くの異なる種類を識別するために適用されている。非破壊分析手法として近赤外拡散反射分光法が粒径の異なる微結晶性セルロース(MCC)に適用された。
  本論文の目的は、米国薬局方(USP)の規定内だが、製造業者によりわずかの違いがあるMCCの近赤外(NIR)スペクトルからケモメトリックスモデルを開発し製造業者を予測するための多変量解析戦略を検討することにある。
NIRスペクトルを用いて、薬局方に従って同一性がある医薬賦形剤を体系的にモデル化し製造業者を予測するような研究は従来ない。
  MCCの分光学的違いを調べた。これらのサンプルは、化学的、物理的特性に微妙な違いを持っ​​ていて、賦形剤として使用される際の違いの原因となる。近赤外(NIR)スペクトルを使用して、MCCの製造業者を分類するためのモデルを構築し、これらの違いを検証した。
アメリカ、日本、台湾、ドイツ、ブラジルの5つの地域(異なる業者)で製造された水分含量、粒子サイズ、かさ密度等が異なるサンプルが1年間にわたって収集された。これらのサンプルは39サンプル のキャリブレーションセットと9サンプルのテスト用セットに分けられた。
分解能0.5nmで測定されたスペクトルがSNV、サビツキー・ゴーレイの2次微分、Mean Centeringの前処理が施され最適化された。
  賦形剤分類のために従来使用されている方法は、パターン認識方法(例えば、SIMCA)でモデルを構築するために、比較的大きなサンプルサイズが必要だが、部分最小二乗判別分析(PLSDA)はSIMCAに比べ小さいサンプルサイズの分類に適用されている。
教師なし分類法である主成分分析(PCA)が、同じ前処理を行ったデータセットで適用され、教師付き分類方法のPLSDAの結果と比較された。
PCAではサンプルのスコアプロットはいくつかのクラスターに分かれるが、製造業者間の違いは明確ではない。一方PLSDAによるサンプルのスコアプロットは、製造業者に依存するグループの違いを明らかを示している。
  高分解能NIRスペクトルと、高度なケモメトリック法を使用することによって品質管理における近赤外分光法の判別能力を改善することが出来た。
この結果は異なる製造業者の製品間での差が何か、なぜ同じ賦形剤を一つの業者から他の業者に変えたときに性能のバラツキが起こるのかを理解するだけではなく、賦形剤供給チェインにおける品質管理において近赤外分光法がスペクトルと賦形剤の性能と相関があって判定の根拠として使用できることを示した。
  今回使用したようなサンプルセットを短期間で集めることは難しいので、広範囲のデータ収集したデータベースが必要になり、多くのサンプルの収集、継続的な改善、再校正、新サンプルを持つモデルの検証が製品ライフサイクル管理計画の一部となるだろう。