題名:Comparative Variable Temperature Studies of Polyamide II with a
Benchtop Fourier Transform and a Miniature Handheld Near-Infrared Spectrometer
Using 2D-COS and PCMW-2D Analysis
著者:Miriam Unger, Frank
Pfeifer, and Heinz W. Siesler
出典:Applied Spectroscopy 2016, Vol. 70(7) 1202–1208
【抄録】
この論文の主な目的は、小型ハンドヘルド近赤外(NIR)分光器とフーリエ変換近赤外線(FT-NIR)分光器の性能を比較することである。ポリウレタンおよび脂肪族ポリアミドの場合、温度上昇の関数としての水素結合の変化は、それらの熱的および機械的特性に大きな影響を及ぼす。この論文で調査されたポリアミド11(PA11)の可変温度NIRスペクトルの分析は、カルボニルとNH官能基との間の水素結合の温度変化に関する重要な情報を提供する。外部摂動によって誘発されるスペクトル変化は、2次元相関分光法(2DCOS)および摂動相関移動窓二次元(PCMW2D)分析法によって分析された。同期2DCOSは、外部摂動(ここでは温度の上昇)の変化の間の2つの別個のスペクトル間の全体的な類似性または同時の変化を表す。非同期2DCOSは、同期して相関されていないスペクトル強度の変動を表す。PCMW2D相関法は、スペクトル変数(ここでは波数)軸と摂動(ここでは温度)軸との2次元マップにプロットされた同期スペクトルと非同期スペクトルのペアを提供する。両方の技術の重要な利点は、外部摂動中の重なり合ったバンドの複雑なスペクトル強度変動を検出することができ、これらのスペクトル強度変動を引き起こす現象の連続的な順序を決定できることである。
FT-NIR分光器と、小型NIR分光器の性能を比較するために、半結晶PA11シートの可変温度スペクトルを同じ実験条件下で測定し、2D-COSおよびPCMW2Dを使用して分析、評価した。6050~7500cm-1の波数域がFT-NIRおよび小型NIR分光器でそれぞれ測定された。この波数範囲は、2D-COSおよびPCMW2Dを使用して温度区間30-190℃における脂肪族セグメントの再結晶化および水素結合構造の変化に関する情報を抽出するために選択された。この波数域は、両方の分析器で利用可能なため、それぞれの2D-COSとPCMW2Dの結果を直接比較することができる。
スペクトルで観察される最も顕著な強度変化は、水素結合および遊離NH官能基(6400〜6800cm -1)の倍音(NH)領域で起こる。スペクトル分解能の大きな違い (データポイント間隔:4cm-1と43cm-1 ) にもかかわらず、6800〜6520cm -1間および6520〜6450cm -1間の両方のPCMW2Dは、水素結合種を犠牲にしてNHフリー官能基が生成することを示している。
PCMW2Dデータとは対照的に、FT-NIRのより高いスペクトル分解能は、小型NIR分光器と比較してはるかに複雑な2DCOSクロスピークを示す。 FT-NIRでは同期および非同期の2D相関スペクトルにおいて、それぞれ3つおよび8つのクロスピークが観測されるが、小型分光計では、2つおよび3つのクロスピークのみが見える。
FT-NIRおよび小型NIR分光器で測定されたPA11の可変温度NIRスペクトルの2D相関およびPCMW2D分析結果から、温度間隔30-190℃での脂肪族鎖構造における同期および変化の順序ならびにこのポリマーの水素結合に関する情報が得られた。40℃~110℃間の脂肪族鎖セグメントの再結晶の後、190℃での融点までに配座の乱れが起こる。スペクトル分解能の大きな差にもかかわらず、FT-NIRおよび小型NIR分光器で測定された可変温度スペクトルから調査されたポリマーの構造変化に関して同じような結論を引き出すことができることが判明した。