題名:Comparison of Fiber Optic and Conduit Attenuated Total
Reflection (ATR) Fourier Transform Infrared (FT-IR) Setup for In-Line
Fermentation Monitoring
著者:Cosima Koch, Andreas E.
Posch, Christoph Herwig, and Bernhard Lendl
出典:Applied Spectroscopy 2016, Vol. 70 (12) 1965–1973
【抄録】
In-situ用の全反射(ATR)プローブの開発に伴い、バイオプロセス分析およびモニタリングのための中赤外領域(400-4000cm-1)フーリエ変換赤外(FT-IR)分光法は、バイオプロセスのインラインモニタリングおよび制御のための重要なプロセス分析ツール)となっている。
ATRプローブは光がサンプルに浸み込む深さが数マイクロメートルと限られているため、通常は発酵培地の主成分である水の吸収の影響で使用が制限されるが、部分最小二乗回帰(PLSR)等の多変量解析モデルを使用できる信頼性の高い分析システムが利用可能であれば、可溶性サンプルの定量が可能である。
分光器とATRプローブを接続する2つの方法(中空光導管(光導管)と光ファイバー)がある。光導管は、ミラーを調整することによって光のスループットを最大にする必要がある。信頼性の高いスペクトルを得るためには調整位置に変化を加える振動等を避ける必要がある。インライン発酵モニタリングのために光導管プローブを使用する場合、攪拌器からの振動がFT-IR測定を損なう可能性があるため注意が必要である。光ファイバー内では、光は全反射によって透過され、透過範囲は材料特性に依存する。高波数限界は電子吸収(バンドギャップエッジ)によって決定され、低波数限界はマルチフォノンエッジに依存する。多結晶ハロゲン化銀(AgX)は、現在、FT-IR分光プローブのために最も一般的に使用される光ファイバー材料で指紋領域(1500-900cm
-1)の測定が可能である。光ファイバーATRプローブを用いたバイオプロセスモニタリングに関する研究はほとんど発表されていない。
ここでは、インラインバイオプロセスモニタリング用のプロセス分光器に接続された光ファイバー付きATRプローブ(以下RIR15)と光導管を用いた乾燥空気パージ付ATRプローブ(RIR45)のシステム性能を比較する。 両方のシステムを同じバイオリアクターに連結し、4つのPenicillium chrysogenum(ペニシリウム‐クリソゲナム:青かび)発酵を行い、生成物(ペニシリンV、以下PenV)およびその前駆体(フェノキシ酢酸、以下POX)をPLSRと組み合わせたFT-IR分光法と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってモニターした。光導管と光ファイバーを使用した ATR FT-IRシステムのそれぞれの利点と潜在的な短所について議論する。
青カビ菌株4種のフェドバッチ発酵が、プロセス制御と管理システムが統合されたシステムを用いて15Lのオートクレーブを持つ攪拌型バイオリアクターによって実行された。 RIR15とRIR45の両方ともバイオリアクターに挿入された。
PenVとPOX濃度は、バイオイアクターに組み込まれたアイソクラティックHPLCによって測定された値を検量線の基準値として使用した。 サンプリングレートはPenVとPOX濃度の変化に合わせて調整され、緩やかな変化が予想される場合、3時間ごとに行われたが、POXの添加中にはサンプリング間隔は16分(クロマトグラム実行時間)に短縮された。各々の構成について、オンラインHPLCサンプリング時間に最も近い3つのスペクトルを平均し、検量線作成に使用した。前処理はMean Centeringと1次微分で検量線はPLSRを使用した。
RIR45の全体的な性能はRIR15の性能よりも良く、1400-1200cm-1のスペクトル領域において、RIR15はRIR45よりもRMSおよびPPノイズがそれぞれ約2倍大きく、予測値もわずかに低いRMSEPが得られた。RIR15で推定された濃度は、PenVとPOXの両方のRIR45よりもスペクトル毎のバラツキが大きい。全体的に、二つのシステムは、HPLCの値を基準にして約0.2g L_1以内のPOXおよびPenV濃度推定が可能であり、RIR45が相対的に良い結果となった。 バイオプロセスモニタリングのためのシステムを選択する際には、設置およびメンテナンスの容易さ(乾燥空気パージの有無等)と測定精度とコストとの間のトレードオフがなされなければならない。