2017年9月10日日曜日


<文献検索から>(25) 量子化学計算に裏付けされたローズマリー葉に含まれるロズマリン酸の近赤外分光法と赤外全反射分光法による定量測定の評価

題名:Critical Evaluation of NIR and ATRIR Spectroscopic Quantifications of Rosmarinic Acid in Rosmarini folium Supported by Quantum Chemical Calculations
著者:C. G. Kirchler, C. K. Pezzei, K. B. Beć, R. Henn, M. Ishigaki, Y. Ozaki, C. W. Huck1
出典:  Planta Medica April 2017

 用語:ロズマリン酸
ローズマリー、シソなどのシソ科の植物に含まれているポリフェノール。ロズマリン酸は低分子ながらタンニン活性を示す物質としても知られている。ロズマリン酸の抗酸化作用によりアレルギー症状を抑える効果がある。タンニン:タンパク質などと結合する水溶性ポリフェノール
 
【抄録】
本研究では、ローズマリー葉に含まれるロズマリン酸含量の測定における近赤外(NIR)および全反射赤外分光(ATR)の性能を評価した。さらに、量子化学計算を用いて、ロズマリン酸の理論的な赤外スペクトルを得て、測定スペクトルと比較した。
「漢方薬」又は「伝統医学」での生薬の重要性は過去数十年に著しく増加している。2004年以来、欧州医薬品庁(EMA)の一部であるHMPC European Medicines Agency's Committee on Herbal Medicinal Productsは、ハーブの物質、調製物、および組み合わせのためのモノグラフを公開している。 本研究の対象であるローズマリー葉について、HMPCは、胃腸および消化器障害の軽度の痙攣性疾患の症状緩和のための治療に適応するとしている。ローズマリーの葉は約1.12.5%のロズマリン酸(RA)を含む。RAの酸化防止効果は、そのフェノール酸またはヒドロキシケイ皮構造に基づいており、ラジカル消去活性はフェノール性ヒドロキシル部分によると推論されている。 RAの主な効果は、抗ウイルス、抗菌、抗酸化、抗炎症等である。
赤外分光法は、光と物質との相互作用に基づいており、分子振動の励起中の双極子モーメントの変化を必要とする。 MIR領域(4000400cm-1)は、基本振動による吸収によって主に支配される。特にC = OまたはC-Oのような極性基の基本的な振動遷移が最も顕著である。 一方、NIR領域(128214000cm-1)では、吸収は一般にC-HO-H、およびN-H部分の倍音振動および合成振動に由来する。MIRおよびNIR分光法の単純化モデルは、両方の技術の大きな違いを表している。 したがって、本研究では、ATR-IRNIR分光法のローズマリー葉のロズマリン酸(RA)含量を定量する能力の比較と評価を扱う。
粉砕されたローズマリー葉42サンプルは、HPLC-DAD (Diode array detector) 分析で測定されたロズマリン酸標準値(1.1382.199%)と近赤外(NIR)と赤外全反射(ATR-IR)スペクトルとの相関を、部分最小二乗法(PLS)を使用して調べた。HPLC-DAD分析の結果は、RA濃度範囲:1.138-2.199 %で相関係数R2; 0.9997LOD (Limit of Detection)0.067 ; LOQ (Limit of Qualification)0.120 %であった。
クロスバリデーション(CV)とtest-setを使用した評価は、NIRATR-IRで(NIR: test-setによる相関係数0.9CVによる標準誤差:0.06ATR-IRtest-setによる相関係数0.91CVによる標準誤差:0.063)とほぼ同等の結果となった。
測定されたスペクトルをより深く理解するために、量子力学的計算によってRAの理論的IRスペクトルを計算した。RA分子の構造およびその後の振動分析は、ハイブリッド密度汎関数により、信頼できるスペクトルの波数と強度を計算できることが過去の文献に示されているのでDFT密度汎関数)理論で行った。低波数域で純粋なロズマリン酸のスペクトルと良好に一致したが、波数が高い領域では一致度が劣った。