2013年12月15日日曜日

<文献探索から> (6) 近赤外分光法を用いた純粋なエチレングリコールとエチレングリコール溶液の分子構造と水素結合の研究


(題名:Molecular structure and hydrogen bonding in pure liquid ethylene glycol and ethylene glycol –water mixtures studied using NIR spectroscopy)
著者:Yujing Chen, Yukihiro Ozaki and Mirosław A. Czarnecki
出典:Phys. Chem. Chem. Phys (2013)

【抄録】エチレングリコール(EG)と水の混合液は、EGがかなり低濃度でもガラス状であり結氷を防ぐので冷媒として広く使用されている。EGは又分子間と分子内の水素結合の相互作用の研究対象でもある。EG及び水との混合液のスペクトルは2次元相関法とMoving Window2次元相関法とケモメトリックスを使って評価された。EGに水を加え濃度を変えると水の結合音(ν(対称伸縮振動)、ν2 (変角振動)、ν3 (非対称伸縮振動))のピーク位置が変化する。
ν2 とν3の結合音(ν2+ν3)では5149cm-195%EG)⇒5166cm-1(50%EG)5182cm-1(100%)と変化するに対し、ν1 とν3の結合音(ν1+ν3)では、6850cm-1(50%EG)6887cm-1と逆にシフトする。CH伸縮振動の変化は純粋なEGの液体とEG-水混合液の構造がOHグループの分子間水素結合によって決定されていることを示している。水の結合音の解析結果はEG高濃度溶液中の水分子はEG2分子で主に結合されていて、この水素結合はバルク水の結合より強固であることを示した。
さらに異なる有機混合水の結果と比べると極性基の総量と分布が有機相における水の溶解性を決定する重要な要素であると結論付けられた。これらの分布は炭化水素鎖の長さと構造に依存し、EG水溶液中のOHグループの個体数と相対的に均一な分布は液体EGの溶解性に影響する。

注)
1) EGは、2価アルコールの一種で分子式はC2H6O2IUPAC命名法では エタン-1,2-ジ オール、あるいは 1,2-エタンジオール
2) IUPAC(アイユーパック):
International Union of Pure and Applied Chemistry, 化学者の国際学術機関

<展示会見て歩記>(9);第29回近赤外フォーラム

【展示会概要】
近赤外線領域(波数:12000cm-14000cm-1(波長0.8~2.5μm)の分光法に関する国内最大の研究討論会、参加人数約250人、口頭発表16件、ポスター発表36件、協賛/展示企業23社であった。展示発表された分光分析計の傾向としては、小型、ポータブル、イメージといったところかと思う。技術的にはMEMS (Micro Electro Mechanical Systems)を使用した微細な光学素子あるいは機械エレメントが実現出来てきて分光システムに適用されたことが大きい。発表された内容もそれら分析計の応用に関するものがあり、手袋に分光計を搭載しイチゴを持つと糖度がわかるような機器とか聴診器を少し大きくしたような分光計の展示もあった。
 このような中でアフリカでサーバル(野生の大型猫?)の雌雄判別を小型のポータブル近赤外分析計を用いて行った例を少し紹介する。サーバルの糞のスペクトルから雌雄の判別をするのだが、糞そのものを持ち帰って分析するの大変で時間もかかるがスペクトルは小型ポータブルの分光分析計があれば現場で簡単に取り解析することが出来る。今回は糞のDNA解析とスペクトルから雌雄判別の可能性を調査した結果、スペクトルからの雌雄判別は可能であるとの結論であった。
 MEMS応用という技術orientedの製品にみえるが、小型/ポータブルの分光計が新しい市場/可能性を生み出すのは確かのように感じた。