図Ar11-1, Ar11-2に光路長約40cm、濃度約400ppmの水蒸気スペクトルを示す。図Ar11-1は赤外域、図Ar11-2 は近赤外域を示す。赤外域では主に調和振動が、近赤外域では非調和振動が観測され近赤外域の吸収は結合音になる。<調和性と非調和性については“スペクトルあれこれ(6)を参照>
水分子は非直線状の構造のために対称伸縮(3652cm-1)ν1、非対称伸縮(3756cm-1)ν3、変角振動(1595cm-1)ν2により赤外光を吸収する(図Ar11-3)。気体の場合は回転運動による吸収もある。回転運動による吸収のため気体のスペクトルは、図Ar11-1,11-2に示すようにほぼ等間隔の鋭い吸収ピークを持つ。そのため、これらのスペクトルは振動回転スペクトルと呼ばれる。図Ar11-1の左側は、対称伸縮と非対称伸縮に回転スペクトルが重なり複雑なので、振動モードがひとつしかない変角振動に注目してみる。(図Ar11-4)
ピークは大きく左右に分かれているが、これは回転順位に依存する。低波数側をP枝、高波数側をR枝と呼ぶ。図Ar11-5に2原子分子の振動回転スペクトルの例を示した。水蒸気のスペクトルは非調和性があり又3原子分子で回転モードが3つ(図Ar11-6)あるために、図Ar11-5のように簡単にはならない。
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