<文献検索から>(21) 四塩化炭素中のメタノール-ピリジンの複合体形成によるメタノールのOH 伸縮振動の基本音と倍音の吸光強度変化と振動数シフト:近赤外及び赤外分光法とDFT計算による解析
題名:Absorption intensity changes and frequency shifts of
fundamental and first overtone bands for OH stretching
vibration of methanol upon methanol–pyridine complex
formation in CCl4: analysis by NIR/IR spectroscopy and
DFT calculations.
著者:Y. Futami, Y. Ozaki and Y. Ozaki
著者:Y. Futami, Y. Ozaki and Y. Ozaki
出典:Phys.Chem.Chem.Phys.,2016, 18, 5580
<用語>DFT(Density functional Theory)……密度汎関数理論
<用語>DFT(Density functional Theory)……密度汎関数理論
【抄録】
倍音、組み合わせモード、非調和性と振動ポテンシャル等の近赤外(NIR)分光法の基礎研究は、スペクトル解析の進歩と量子化学計算の発展により顕著な進展をしている。倍音は調和振動子近似では禁止され、分子振動の非調和性に起因している。それゆえNIR領域の吸収帯域の振動数や強度は分子内または分子間相互作用のような分子構造(NH–N, OH–O, N(O)H,……π水素結合等)に敏感である。倍音の強度が、振動量子数の増加に伴い指数関数的に減少することは、強度分布の法則として知られている。吸収強度は、振動波動関数と双極子モーメント関数から計算される。OHおよびNHの水素結合の形成は、基本バンドの吸収強度を増加させるが、OH(NH)基に結合した水素の伸縮モードの第一倍音を測定することは非常に困難であることがよく知られている。
我々は、四塩化炭素溶液中のピロール-ピリジン複合体の形成と溶媒の変化に依存するピロールのNH伸縮振動の基本音と第一倍音の吸収強度の変化と振動数シフトを調査するためにNIR/ IR分光法および密度汎関数理論(DFT)計算を使用してきた。振動数シフトを伴う吸収強度の変化の変動は、ピロールとピロール-ピリジン複合体では全く異なっていた。分子間水素結合に関与しているメタノールOH伸縮モードの第一倍音に依存する吸収帯、または水素結合形成前後の第一倍音の吸収強度変化に関する明確な測定と解析についての報告はない。
本研究では、四塩化炭素中のメタノール - ピリジン複合体を形成する際のメタノールのOH基本音と第一倍音伸縮振動の吸収強度変化と振動数シフトを調べた。
ピリジンは、代表的なプロトンアクセプタであり、OH伸縮バンドと重なるピークを持っていいない。ピロール - ピリジン複合体に関する我々の前のNIR/ IRの研究では、水素結合したNH基伸縮の第一倍音に依存する吸収帯を実験的に測定することができなかった。本研究においては、水素供与体および水素受容体の量を調整することにより、実験によるメタノールのOH基伸縮モードの水素結合第一倍音吸収帯を測定することに成功した。メタノール-ピリジン複合体のOH-N水素結合のOH伸縮モードの第一倍音に依存する非常に弱いピークを観察することができた。水素結合の形成は、基本音の吸収強度を19倍増加させ、第一倍音を1/6減少させる。
さらにDFT計算を用いて、メタノールおよびメタノール-ピリジン複合体の最適化構造を推定した後、一次元シュレディンガー方程式に基づきOH伸縮振動のための基本音と第一倍音の吸収強度と振動数を算出した。量子化学計算は、上記の強度変化とよく似た結果を示した。 DFT計算は、振動ポテンシャルと双極子モーメント関数は、水素結合の形成に大きく変化することを示した。振動ポテンシャルにおいて、水素結合により解離エネルギーは減少し、双極子モーメントの傾きは増加する。解離エネルギーの減少は、また非調和性の変化にもみられる。双極子モーメント関数の大きな変化は、基本音と第1倍音帯の吸収強度の変化のための主要な原因である。
この結果は、NIR分光分析の将来のアプリケーションのための基本的な知識となる。
【実験条件及び量子化学計算方法】
サンプル:四塩化炭素中のメタノール0.005~0.5mol/dm-3
使用分光器:FTIR(測定波数域12000~2500cm-1)
分解能:1cm-1、使用セル:矩形石英パス長10mm10mm
量子化学計算ソフト:Gaussian 09 (with the 6-311++G(3df,3pd))
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