2014年3月30日日曜日

<文献探索から> (8) PHBとCABスフェルライト結晶成長についての水素結合の分子間相互作用の影響:FTIRとFTNIRのイメージング分光装置を用いた研究


(題名:Effects of Hydrogen Bond Intermolecular Interactions on the Crystal Spherulite of Poly(3-hydroxybutyrate) and Cellulose Acetate Butyrate Blends: Studied by FT-IR and FT-NIR Imaging Spectroscopy)

 著者:N. Suttiwijitpukdee, H. Sato, M. Unger, and Y. Ozaki
 出典:Macromolecules  45, 2485-2493 (2012)
専門用語解説:
生分解性プラスチック……微生物により分解される生分解性プラスチックは、植物が光合成した糖や植物油をエサとして、微生物が体内に合成するプラスチックで、使用後に微生物の持つ酵素の働きで水と二酸化炭素へと分解され、これらを植物が取入れて再び光合成を行い・・・という、自然界の炭素循環サイクルに組込まれているために注目を浴びている。生分解性プラスチックには、生物資源(バイオマス)由来のバイオプラスチックと、石油由来のものがある。主流はバでんぷんを原料とするイオプラスチック。
PHB……ポリヒドキシ酪酸;細菌が細胞内に産生する生分解性プラスチック
CAB……セルロースアセテートブチレート;セルロース(綿、木材など)から作られる生分解性プラスチック
スフェルライト構造……中心から放射状にアミロイド線維がのびた構造
アミロイド……ある特定の構造を持つ水に溶けない繊維状のタンパク質
FTIR …… フーリエ変換型赤外分光器
FTNIR ……フーリエ変換型近赤外分光器
【抄録】生分解性プラスチックの1種にPHA(ポリヒドロキシアルカン酸)がある。ポリヒドキシ酪酸(PHB)はPHA1種で生分解性と生体適合性に優れているため、従来から実用化と工業的な生産性改良の検討がされて来た。一つの方法としてPHBの共重合がある。CABは生分解性と生体適合性に優れPHBとのブレンド対象としてに理想的である。さらにPHB/CABのブレンドは、延性と強度に大変優れている。この研究では、PHB/CAB混合品の等温結晶化におけるPHBの結晶化についてIR(赤外)とNIR(近赤外)のイメージ分光装置、及び偏光顕微鏡を使用して調査した。
IRNIRイメージングの調査からPHB/CABブレンド品のスフェルライトの構造変化と成長が3次元的に観測できた。スフェルライト多形の初期状態はX方向に変化した結晶化PHBによって決定される。Z方向に制限されるまでスフェルライトはX,Y,Z3方向に変化する。その後スフェルライトはX,Y方向に大きくなる。
偏光顕微鏡と分光イメージの情報を結合してPHB/CAB溶融等温結晶化状態におけるPHBの不均一なスフェルライトの結晶成長を調査した。結晶化の初期においては非晶質のPHBCABから分離しようと試みて、混合物の非晶質部分にある物理的架橋として振舞っている分子間の水素結合(-OHO=C-)を破壊する。結晶化が継続するにつれて、分離したPHBは純粋なPHBと同じような構造を形成する。
測定スペクトルのPCA(主成分分析)はスフェルライトの異なる部分からのイメージスペクトルをきれいに分離できる。IRイメージングは、赤外域の強いピーク強度のために薄いポリマーフィルムにおける分子構造変化調査に有効で、NIRイメージングは厚いサンプルに適用でき実際のアプリケーションに有用だ。今回の研究においてPHB/CAB混合物の時間分解結晶化イメージ結晶と非賞のピークの面積比から計算された。そして赤外領域の結晶ピーク強度の定量計算は近赤外の計算に比べ精度が良かった。しかし近赤外領域のイメージングスペクトルの吸収帯域は赤外スペクトルの吸収帯域よりより明確に分離が可能であった。
サンプル:PHB,CAB  400μm×300μm、厚さ50μm
空間分解能:25μm×25μm(測定スペクトルはこの領域の平均 で分解能8cm-1