2014年7月21日月曜日

<文献探索から>(10)中赤外分光法を用いたメタノール資化酵母培養のメタノール供給のモニターとコントロールのための簡単な方法


(題名:A simple method to monitor and control methanol feeding of Pichia pastoris fermentations using mid-IR spectroscopy)
著者:J. SchenkI. W. Marison, U.von Stockar
出典:Journal of Biotechnology, Vol 128(2):344-53 (2007)

【用語】
Pichia pastoris(メタノール資化酵母)……大腸菌と動物細胞の間に位置する組み換えタンパク質の宿主。メタノールとアンモニア水からタンパク質を製造する。
ATRAttenuated Total Reflection)プローブ……ダイヤモンド、ゲルマニウム、シリコン等の結晶に全反射する角度で光を入射させると、わずかに光が結晶の外に浸み出してくる。この光がサンプルに入射されるとサンプルの波数吸収特性に依存して光が結晶に戻ってくることを利用したプローブ。
FTIRFourier Transform Infrared spectrometer)  …… フーリエ変換型の赤外分光器

【抄録】
赤外分光法は基本官能基と分子の振動モードに関係した、ほとんどすべての合成物に関する情報を解析出来る。これらは定性分析のための明確な利点であるが定量分析には複雑で時間のかかる検量線作成が要求され、その普及を妨げてきた。赤外分光法にはバイオプロセスモニターの手段として多くの特長がある。ATRプローブを使用すると挿入も出来るし殺菌も可能だ。ATRプローブとFTIRを使用したアプリケーションは、大腸菌、糸状菌、酵母等の培養で色々な規模で報告されている。哺乳動物、植物細胞の培養についての報告もある。しかし定量分析にはかなり多くの標準物質の準備が必要であり多変量解析のような数学Toolの使用と解釈が要求される。これがバイオプロセスモニターに赤外分光分析を適用することの障害になっている。バイオプロセスモニターに適用可能な簡便で迅速な検量線作成手順を必要としている。検量線モデルの開発は情報を抽出するための適当な数学ツールを使用するために非常に多くの標準品の準備と測定を必要としている。サンプルを集めるために多くの時間と労力を必要とし、多くの条件について解析する必要がある。
Pichia pastoris(以下Pichia)培養は検量線を出来る限り早く簡単に作成することを要求されるアプリケーションである。Pichiaは タンパク質を高い比率で合成することが出来、ラボや大規模スケールでも、組み換え型タンパク質の宿主として大変興味深い。2つの仮定のもとに簡単な検量線を構築する検討を行った。

仮定1:一つの濃度だけが培養中に大きく変化する。
Pichiaは炭素源としてメタノール、窒素源としてアンモニア水を消費して組み換えタンパクを製造する。CO2と酸素は濃度が低く考慮する必要がなく、アンモニアはpH制御のために一定になっている。組み換えタンパクの力価は通常検出出来ないほど低い、従ってメタノールは赤外分光で唯一測定でき変化するものである。

仮定2:吸光度と濃度の変化は線形の関係にある。
メタノール水溶液は、COの官能基によるIRの強いピークを1018cm-1に持つ。このピークの吸光度はベールの法則に従い線形と考えて良い。

長期ドリフトの影響を防ぐために984cm-11042cm-1で吸光度を測定し測定初期の吸光度との比を取り984cm-11042cm-1それぞれの比を足して2で割った数値を補正項として使用しベースライン変動の影響を取り除き、1081cm-1の吸光度とメタノール濃度の検量線を作成しReal Time Monitorを行った。簡略化した方法で作成した検量線にも拘らず、サンプルを採取して測定したHPLCの結果と良く一致しSEP(Standard Error of Prediction)0.12g/L(測定レンジ:0.815g/L)であった。