2018年1月7日日曜日

<文献検索から>(27)近赤外分光法とケモメトリックスモデルを用いたシプロフロキサシン錠の分類


題名:Classification of Ciprofloxacin Tablets Using Near-Infrared Spectroscopy and Chemometric Modeling
著者:N. Fuenffinger, S. Arzhantsev, and C. Gryniewicz-Ruzicka
出典:Applied Spectroscopy 2017, Vol. 71(8) 1927–1937

 
出所不明な医薬品、ラベル間違い、偽造医薬品等は、使用者に重大なリスクをもたらす世界的な問題である。米国の個人が摂取した薬物の約40%は、他国で製造されていて、誤ラベル等による使用者への影響が懸念されている。米国食品医薬品局(FDA)は、医薬品の品質と認証を評価するための迅速で信頼できるスクリーニング方法を開発している。医薬品指紋認証は、製品を特定し、その製品を製造元に追跡し、製品品質の変化を検出するための方法の開発を必要とする。2008年、FDAは、イオン移動度分光法、X線蛍光分光法、ラマン分光法、近赤外(NIR)分光法などの技術を使用して、米国への医薬品輸入の迅速なスクリーニング方法の開発を目的としたプロジェクトを開始した。これまでの研究では、ニューラルネットワーク、SIMCA soft independent modeling)法、K-最近傍法などのパターン認識分類手法を高速液体クロマトグラフィー測定に適用することによって医薬指紋認証をすることが可能であることが示されている。

NIR分光法は、医薬品を安全で迅速かつ効果的にスクリーニング可能なコストパーフォーマンスの高いツールである。この研究の目的は、いくつかの製造業者からのシプロフロキサシン塩酸塩錠剤の分類に関するNIRおよびケモメトリクスの能力を決定することである。シプロフロキサシンはヒト毒性の低い合成フルオロキノロン抗生物質であり、ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、ヘモフィルスおよび緑膿菌などの広範囲の生物に有効であることが証明されている。
米国およびインドの6つの製造業者から53ロットにわたる1025のシプロフロキサシン錠剤のNIR吸収スペクトルを収集し評価した。NIRスペクトルは、フーリエ変換NIRアナライザーを用いて 1製品あたり合計24の錠剤を分析した。各錠剤からのスペクトルは、8.0cm -1の分解能で400010,000cm -1の領域にわたって32回のスキャンを平均することによって計算した。前処理は、Savitzky-Golayアルゴリズムを使用して一次微分しSNVStandard Normal Validate)変換を行った。

製薬指紋認証の究極の目標は、(1)製造業者を特定することができるモデルの開発、 (2)医薬品の投与量を特定 (3)工程または原材料の変化に起因するロット間の変動、を評価することである。ここでは、最初の2つの目標のいずれかがシプロフロキサチン錠剤のNIRスペクトルから達成可能であるかどうかを特定するための客観的方法として、教師なし分類モデルの階層クラスター分析(Hierarchical Cluster Analysis : HCA)による分析を行った。HCAと二乗ユークリッド距離測定から得られた結果は、製造業者間でNIRスペクトルの最大の違いが生じることを示している。これらの知見に基づいて、シプロフロキサシン錠剤の成分の違いを予測する目的で、主成分分析の主成分を用いてデータ量を縮小した後に二次判別分析(QDA)モデルを構築した。 QDAを使用して、正確に96%以上の精度で907錠の錠剤を正確に分類することができた。