2015年11月1日日曜日

<文献検索から>(17)近赤外分光を用いた液状の純粋エチレングリコールとエチレングリコール水の混合液の分子構造と水素結合の研究


(題名:Molecular structure and hydrogen bonding in pure liquid ethylene glycol and ethylene glycol;-water mixtures studied using NIR spectroscopy
著者:Y. Chen, Y. Ozaki, and M. A. Czarnecki
出典:Phys. Chem. Chem. Phys., Sept. Vol.15 No.42, P18694 18701, 2013

【抄録】
エチレングリコール(EG)と水の混合液はEGがかなり低い温度でもガラス状態を形成し0℃以下でも氷の結晶化を防ぐ。そのためEGは最も重要な抗凍結剤で広い分野で使用されている。水素結合についてはまだ議論の余地があり、EGは又分子間、分子内水素結合を研究するためのモデルである。17B-1は分子内結合の有無を示している。

          

EGEG・水の混合液の分子構造と水素結合について、近赤外スペクトルを2次元相関とMoving Window2次元相関、ケモメトリックスを使用して解析した。
主成分分析(PCA)は水-EG混合液のスペクトルに濃度に依存する3つの独立した要素があることを示した。
2次元相関を用いた解析では、純粋な液状態のEGの分子は分子間水素結合を持っているが、分子内水素結合は観測できなかった。CH伸縮振動のわずかな変動は純粋液状EGと水との混合液の構造がOHグループの分子間結合によって決定されていることを示した。水の非対称伸縮と変角の結合音の解析はEGリッチの溶液において水分子が、二つのEG分子と主に結合しこの水との水素結合はバルクの水の結合よりも強いことを明らかにした。
Moving window2次元相関解析はフリーと会合したOHグループの変化では、パターンが異なり、フリーのOHグループのスペクトル変化は40℃で最大になり会合したOHでは50℃になっていることを示した。温度の異なるEG-水混合液のスペクトル変化から水―水 水素結合は温度上昇に伴いEG-水の水素結合より早く弱くなることがわかった。水とプロパンジオール、脂肪族アルコールの混合液からは、水とジオールまたはアルコールとの相互作用は、水-水間の相互作用より強いことが明らかになった。
さらに水を加えるとEGOHグループの周りに小さな水のクラスターを形成する。これらのクラスターの大きさはEGの濃度に依存し、EG濃度が低くなると水のクラスターサイズは大きくなる。今回の結果と従来報告されている他の有機溶媒と水との混合液に比べてみると、水の2成分混合液では水と極性基の総量と分布が有機相における水の溶解性を決める重要なファクターであるという結論になった。液相における官能基の分布は分子の疎水性部分の大きさと構造に依存する。これらの官能基がより均一に分布すると有機相における水の溶解度はより多くなる。